荒川水系の新河岸川の支流である黒目川の、そのまた支流である落合川と、そのまた支流をいくつかまわってみた。
落合川については、黒目川の支流の中ではおそらく最大で、この地域の豊富な湧水を集めた清流として有名な川である。都心からそれほど離れていないこの地域にこれだけの清流が流れるのは珍しいとも評されている。落合川だけでなく、そこへ注ぎ込むいくつかの湧水の沢、川もあわせて訪ねてみた。今回の登場人物は、落合川、南沢湧水群、こぶし沢、ひょうたん池、弁天池、立野川といった面々になる。
毎回、散歩の足あとを行程として載せているが、今回の散歩コースはあちこちぐるぐる回って足あととしては見にくい。そちらは目立たなくしておき、登場人物の各ポイントをアイコンで示して位置関係がわかるようにしてみた。
落合川行程・ポイント
落合川は黒目川の支流ということで、前回、黒目川歩きの続きの形でナンバリング。
黒目川その1 ◆1から◆4
黒目川その2 ◆5と◆6
◆7.落合川を上流へ
黒目川を小平霊園のさいかち窪まで遡ったあと出直して、落合川へ。
駅から黒目川、落合川の合流点までは、直接行けば歩いて20分くらい。合流点の見える神宝大橋へ。
神宝大橋のうえから本日の黒目、落合川合流点
左側が落合川、右側が黒目川。
合流点の上側から
前方にみえる橋が神宝大橋。先ほどと方向が逆になっているので右側が落合川。右側の歩道に沿って遡上を開始。上流端までの長さはおおよそ3.5kmほどである。
合流点を振り返って
落合川の水はたしかにきれいだ。流れている水のほぼすべてが周辺の沢や川底などからの湧水だという。春のまだ降雨の多くない時期に、これだけの水量が確保されるのは、いかにこの付近の湧水量が多いかということだ。
合流点から100mほど上流
正面、草が生えているところの後ろの吐水口から流れ込んでいるのは、支流のひとつ弁天川。弁天川は東久留米駅近くの厳島神社の池を源流とする小河川。弁天川はほとんどの区間で暗渠となっていて、今回はフォローしていない。
また、この場所から数十メートル上流の、新落合橋の脇では立野川が落合川に合流しているが、そちらは最後に。立野川合流点のすぐ近くには落合川河川敷からの湧水も見られた。
新落合橋のたもとから
合流点から2つ目の橋、落合橋の上流側から
共立橋の下流側
この付近で合流点からは1キロほど。合流点からこのあたりまで、川の様子にあまり変化はない。
その上流で西武池袋線の線路を越える。
西武池袋線橋梁の上流側から
この橋梁を越えてすぐのところに、近くの竹林公園の湧水が沢になって落合川に流れ込んでいるところがある。この沢は「こぶし沢」という名前がついている。(写真、右の歩道、高架の出口下に合流点の吐水口があるが、陰になっているせいもあって非常にわかりにくくなってしまった。)
こぶし沢、落合川との合流点近くで
こぶし沢の上流については後ほど。
老松橋の上流側から
落合川いこいの水辺
水辺の小公園として河原が整備されている場所。川に入って遊んでもOKとなっていて、都市近郊では珍しいといえる場所だと思った。
いこいの水辺の少し上流側
前方は毘沙門橋、右側に多聞寺というお寺がある。
毘沙門橋のうえから上流側
橋のところに小さな堰があるせいか、このあたりは水の流れがゆるやか。写真左側は南沢水辺公園となっている。この付近で南沢緑地の湧水群からできた南沢が落合川に合流する。南沢湧水群は落合川流域でも最大の湧水量があるそうだ。
南沢は後回しにしてこのまま落合川をさかのぼる。
毘沙門橋から3~400mさかのぼったところに川が二又になっているところがある。
新流路と旧流路の合流点
左側が河川改修後の直線化された川筋だが、右側に旧流路も残されている。おそらく旧流路内に湧水があるなどで、埋めることができずに残されたのではないだろうか。
残された旧流路の流れ
湧水があるかどうかまでは確認できなかった。
新流路側へ出ると、途中で小さな流れが合流しているのに気付いた。
小さな流れの合流
右側の護岸から水が流れ込んでいた。これも湧水か。
この先、新流路と残された旧流路が分岐する地点近くに、落合川へ流れ込む流れがまたひとつあった。
先ほどよりは大きい、水の合流
こちらの流れは暗渠になっていたが上を辿って行け、その先にひょうたん池という名前の池があった。
ひょうたん池
そこから道路を1本隔てた向こう側、中央第6緑地という場所にも池があった。
中央第6緑地の池
こちらには水はなかった。この付近の地形は、小規模だが谷頭のようになっていて水が湧くようにも見えるが、宙水というごく浅い場所の水のようにも思える。よくわからない。
ひょうたん池からの水の合流点よりも、ちょっと先にまた流れが合流しているところがあった。
また新たな流れが合流
向こうが落合川で、そこへ水が流れ込んでいる。このあたりの沢の水量としては結構多いように見えた。ここの水は途中から暗渠になった上流側の流れが追えず、どこから来ているのかわからなかった。しかし、流路上に落合川の川筋とは別につくられた歩道があったりして、ここは旧流路で、そこの湧水なのかもと想像。
その歩道を上流側へ歩いて行くと、先で落合川の流れに合流する。
旧流路?上の歩道と壁面の下は落合川
向こうの直角護岸の下に落合川が流れる。
弁天フィッシングセンターの池
弁天池の釣り堀。先ほどの場所からすぐ上流側にある、この釣り堀の池の水はここの湧水が使用されていて、ここの水が落合川に流れ込んでいるらしい。古い地図を見るとここには元々池(弁天池)があり、ここが落合川の最上流部のように見えるものが散見される。落合川はこの上流部では水が枯れやすいが、ここの池からの水の供給は年中あったのかもしれない。
釣り堀近くの御成橋とその上流弁天橋の間の落合川の流れ
弁天橋の上流側から
先ほどの釣り堀より100mほど落合川をのぼったところに弁天橋がある。この日、落合川で流れを確認できたもっとも上流地点がここになる。右下に丸い吐水口があるが、そこの下にもうひとつ写真では確認できないが、小さな水抜き穴のようなものがあり、そこから水が流れ込んでいた。周囲は水が溜まった状態になっているが、橋の下流側で流れとなっていた。
弁天橋より上流側はこの状態
上流端に到達
看板が見にくいが、落合川上流端となっている。水が切れた弁天橋からは200mくらいの距離か。この先にも小さな流路があるが、50mほど先で行き止まり。その場所が源流ではあるが、常時水が湧いているわけではないとのこと。この日も水はないことが分かっているので源流部分にはいかず、周囲をぐるっとまわって、源流のある場所が小さな谷地形になっていることを確認して終了にした。
落合川の遡上はこれでおしまい。ここからは、落合川の支流となる沢、川をいくつか。
◆8.こぶし沢
落合川の西武池袋線橋梁すぐ上流右岸側に一筋の沢が合流している。
この沢は近くの竹林公園付近にある湧水が流れ出しているもので、長さは300m程度だろうか。
少しさかのぼったところ
途中、住宅地内を通るところはこんなかんじ。その先はすぐに竹林公園にはいって自然な流れにもどる。
竹林公園内の沢
源流、湧き出し口のひとつ
左下に白い札のようなものがあるが、そこが湧水地点を示したもの。沢の上は名前のとおり竹林として整備されている。
別の湧き出し口
静かに音もなく、穏やかに水が湧いていた。ここの湧水は「東京の名湧水57選」のひとつだそうだ。
沢の流れ
◆9.南沢湧水群
落合川、毘沙門橋の上流側に南沢水辺公園がある。
左側の奥に向かって南沢水辺公園
そこを通って落合川に合流する沢がある。沢頭流(さがしらりゅう)と呼ばれているらしい。
合流直前の沢頭流
この沢は南沢湧水群に湧く水が集まったもので、湧水群から落合川合流点までは4~500m程度の距離になっている。合流点近くはコンクリート護岸になっているが、上流側は自然の流れそのままに近い状態が保たれ、湧水群周囲の森林は南沢緑地として保全されている。ただしその一部(というより半分以上)は、東久留米市の南沢浄水場として使用され、ここの地下水の一部が市の上水道の水として使用されている。また、浄水場内へは立ち入りができないので、場内から湧き出す水は確認することができなかった。
南沢水辺公園の奥へ進むとすぐに南沢緑地の森になる。
森のなかを流れる沢頭流
氷川神社と南沢湧水のひとつ
足元には湧水群の湧水のひとつが流れている。前方の氷川神社はこの南沢湧水の守護神、鳥居手前には小さな宮前橋。ここの湧水群も東京の名湧水57選に選ばれている。
先ほどの流れの湧水地点
周囲は竹林、窪地の池のようなところから水が静かに湧きだしている。
別の沢筋
右側から流れてくる沢と正面奥の流れが合わさり、この場所は池のようになっている。この右側から流れてくる沢の水は、浄水場内にある湧水がいくつかまとまったものだが、立ち入れないため沢頭までたどれない。出てきたところを確認するにとどまるが、水量はかなり多く、すでに1本の独立した川と呼べるくらいの流れになっている。
浄水場内から流れてくる沢
先ほどの小さな木橋正面奥の流れを追う。
湧水点付近
南沢緑地の奥へ行くと浄水場の敷地になる。敷地は谷地のいちばん奥、谷頭とその崖の部分を占めている。
浄水場の配水塔
浄水場で上水に使用する水は湧水群の水ではなく、敷地の地下に深さ300mほどの井戸を掘ってくみ上げた地下水とのことである。
◆10.立野川
南沢緑地の南側、距離としては200mも離れていないのではないだろうかと思われるところに、向山緑地公園がある。この緑地は北側が斜面になっていて斜面の下に湧水がある。
公園下の窪地をのぞき込む
下りてみると湧水点の立て札があったが、水は湧いていなかった。
少し水が溜まっているだけの湧水点付近
周囲の様子から、水が豊富な季節にはここも川(沢)となっていることは明らか。少し下流側へ行くと水たまり、そしてわずかな水の流れが確認できた。
水がたまり、わずかに流れもできていた
湧水点はここも複数あるようだ。そこからさらに数十メートル下ったところではすでにちゃんとした流れになっていた。
流れになっている
さらに下流へ少し行くと、もうちゃんとした川の流れだ。
途中、築堤の下を川が通りぬけるところがある。
築堤の上からみた立野川(東久留米市学園町付近)
なぜこんなところに川と交差する堤があるのかと思ったら、戦時中、近くにあった中島飛行機の工場へ資材などを運搬するために、武蔵野鉄道(現在の西武池袋線)の引き込み線が通っていたところだそうだ。現在は緑道となっている。
住宅地のなかを流れ、途中学校の敷地の中で暗渠となり、その先でまた顔を出す。
落合川のような水量はないが、またそのせいなのか、川があまりきれいには見えないのだが、水自体は澄んでいて汚れている印象はなかった。
合流点に近づく
下流側ではいわゆる三面コンクリート護岸になってしまうが、ずっと澄んだ水が流れている。
落合川との合流
橋の先で落合川に合流している。左側は新落合橋、正面の橋は落合川の遊歩道に架かる橋である。ここから落合川を2~300mほど下ったところが、黒目川との合流点である。本日のスタート地点に戻ってきたことになる。
落合川とその支流歩きはここまでだが、まだ時間が早かったのでこのあと黒目川沿いに再び少し歩いて散歩を終えた。帰りはまた東久留米駅へ。
落合川周辺には桜の木はあまり多くなく、花の時期だったけれど写真はあまり撮れなかった。でも清流というのにふさわしい水を見られて満足。