今年6月頃、荒川の河口から歩いて遡上、これより上流は川の両岸とも埼玉県となる笹目橋まで到達していました。
しばらく進捗が滞ってましたが再開を決め、まずこの先の歩き方プランを作成しようと地図を見ていたら、笹目橋の上流側にある湖の存在が気になりました。
彩湖(さいこ)です。
荒川の洪水被害に備えて造られた大規模な調節池内の貯水池なのですが、荒川本流遡上を後回しにして、まずこちらを見て行くことにしました。
そんなわけで再開後初回ではありますが、荒川のはみだし編「彩湖一周」。
今回の足あと地図
彩湖は埼玉県にありますが、東京都板橋区、都営三田線西高島平駅から歩きはじめました。案外彩湖最寄りの駅という認識…あくまで主観ですが
彩湖へのアプローチ、まず国道17号線笹目橋で荒川を渡ります。
笹目橋上で板橋区から埼玉県和光市へ入ります
橋をさらに100mほど行くと続いて「戸田市」という標識が出てきます。
特にこのあたり市区境界線が複雑に入り組んでいます。これは荒川が昔、奔放に蛇行していてその流路に沿って境界を設定した名残りです。川は改修されて蛇行は少なくなりましたが、境界の設定はそのままなのです。
笹目橋から水の上、荒川上流方向
笹目橋は荒川の手前(南側)で新河岸川も渡ってます。
川越方面から流れ下ってくる新河岸川、昔は笹目橋より上流で荒川に合流していましたが、河川改修によって荒川とは水門で隔てられて別の流れとなり、この付近2本の流れが並行しています。
右側に茶色い建物が見えてますが、彩湖の排水門です。まずあちらへ向かいます。
笹目橋を渡り終え、荒川左岸側堤防を上流方向へ。
左岸堤防河口から29.2㎞地点から河川敷方向
河川敷が広大で荒川の流れは見えません。
中央の水門が彩湖の排水門、名称は第一調節池排水門です。
手前小さ目の水門からは下水処理場での処理済水が放流されているようです。
彩湖排水門に沿うように別の堤防、囲繞堤(いぎょうてい)が伸びています。
囲繞堤とは「河道内の遊水地を堤防で仕切って調節池とする場合、その仕切りに作る堤防のことをいい、その外側の本堤を周囲堤といいます。」
彩湖のある部分が調節池、その周囲を堤防で仕切るとき、荒川本流との間の仕切り堤防が囲繞堤です。
排水門のちょっと先から振り返った図を先出しすると
右に荒川本流、左に彩湖遊水地があります。足元を通るのがそれを分けて仕切る囲繞堤です。
別に本堤が荒川本流、彩湖遊水地の外側にそれぞれあります。川幅が広くてまったく見えませんね。
堤防のうえ、歩いていく道は”彩湖パス”……いらん一言
戻って
荒川第一調節池排水門、間際から
グレーの部分が扉、こちらの水門は荒川の逆流防止水門なので平常時は開いています。
荒川の水位が上がり逆流のおそれがあるときなどに閉まります。
彩湖を含めた遊水地全体は「荒川第一調節池」と呼ばれるので名称は荒川第一調節池排水門です。
もうひとつ彩湖側に堰があります。
水位調節堰
彩湖の水位調節はこの堰で行われてます。(水の取入れは荒川上流側の秋ヶ瀬取水堰から行います。)
ようやく堰の向こうに彩湖が見えてきました。いちばん湖尻部分です。
まず囲繞堤を彩湖(遊水地)の上の方へ向かって歩きます。彩湖周囲の長さは約8.5km、広さは1.18㎢です。
しばらく歩くと彩湖の上に立つ斜張橋の大きな主塔が近づいてきます。
橋の名は幸魂大橋(さきたまおおはし)
隣りの丸い島は高圧線鉄塔をのせた中の島。
この2つは対岸からの方がはっきり見えるので後でまた出します。
幸魂大橋は東京外環自動車道、国道298号が通り、橋長は1485.9m。彩湖、荒川、新河岸川を一気に渡ります。埼玉県内の道路橋で2番目に長いそうです。
上の絵では彩湖と荒川左岸堤防付近までが写ってます。
こちらは右岸方向の幸魂大橋
河川敷は戸田パブリックゴルフコース。
両者の中間部分
中堤防(囲繞堤)は草刈り作業直後で土手はどこもこんなかんじでした。
幸魂大橋の下をくぐり抜けて
ゴルフコースの向こう、荒川右岸堤防にある建物は
朝霞水門
かつて新河岸川が荒川に合流していた地点に設けられた水門です。現在新河岸川は荒川と分離され、すぐ南隣りを並行して流れていますが、この水門にも接しており、水かさが増したときなどに水門を開いて荒川へ水を入れ、新河岸川の氾濫を防いでいます。
なので普段は水門閉じているはずですが、このときは開いてます。大雨とか降ったっけ?
黒目川を歩いたときに朝霞水門近くに寄ってます。
黒目川を歩く その1 最初は荒川から遡り、落合川合流点の神宝大橋まで - 散歩の途中
さらに荒川上流側へ
見えているのは荒川本流です。はるか向こうにまた別の水門がありますが、あそこにも行きます。
中堤防(囲繞堤)から下りて湖中央付近の管理橋から
上流側
下流側
ようやく湖に近づきました。(逆回りに歩けばもっと早かったです。)
人造湖でもあり湖周囲はどこもこんな感じです。
夏場(雨期)は水位を下げていますが、今年は2019年台風19号で被災した彩湖流入堤復旧工事のため例年よりさらに下げられ、護岸の露出が多くなっています。
堤防上は陽射しが強く、さらに上流側へは木陰の多少ある堤防の下を歩きました。でも周囲は草原で湖の様子がほとんどわかりません。
たまに垣間見える湖面
変化に乏しく途中省略して彩湖最上部、流入堤よりも先、彩湖の水面はもう無いところへ。
囲繞堤の上から荒川本流とJR武蔵野線橋梁
彩湖の北側(水が流入する側)の堤が工事中で通行できず、さらに荒川上流方向まで行ってから反転しました。
少し前の写真で遠方にちょっと見えていた水門がこれです。荒川支流、鴨川の合流点にある水門です。
水門を背にして鴨川上流方向
正面は彩湖の上流側にある荒川第一調節池にあたり、川は奥から手前へ流れて囲繞堤にあるさくらそう水門から荒川本流に合わさります。
この周辺は昔からサクラソウの自生地(田島ヶ原サクラソウ自生地:国の特別天然記念物指定)ということで「さくらそう水門」、正面は「さくら草公園」です。そしてこのあたりはさいたま市桜区。〈区名は無関係??〉
秋ヶ瀬橋、橋長は1045mあります。このあたり昔から河川敷の幅を広くとって洪水対策としていた経緯があり、そこを横切る橋をかけるとそれは長くなります。
そのまま秋ヶ瀬橋と並行に河川敷を横切りながら歩くと
さくら草公園にはいります
田島ヶ原サクラソウ自生地を含むさいたま市立公園。
残念ながらサクラソウの季節ではなかったのでごく普通の公園でした。
河川敷から荒川左岸側堤防へ到達。
堤防内に流れ込む鴨川の昭和水門
囲繞堤にさくらそう水門のあった鴨川の荒川左岸側堤防の水門。ここから荒川河川敷内に川の水が流れ込んでます。
彩湖最上部の様子
左の建物は彩湖貯水池機場。彩湖の水量を制御するための施設で、取水堰、水位調節堰(排水)のポンプ等、機械の操作、制御がここから行われます。
右へJR武蔵野線橋梁、さくらそう水門とあって、その手前が流入堤でしょう。ダンプカーなどが何台か停まってますが、台風被害の復旧工事を行っています。
昨年台風19号のときは上流側から流入堤をこえて水が彩湖側へ大量に流れ込んだようです。それで堤がえぐられちゃったのでしょうか?
やや引いた場所から
湖のこちら(東)側には広く公園、運動場等整備されていて湖畔沿いに広い歩道もあります。
湖畔の歩道沿いに
水辺に下りられる場所もところどころあります
水位が大きくさげられているらしく封鎖されてましたが、通常時は水面も開放されています。
管理橋まで戻ってきました
なぜか橋の名前がちょっとさえない”管理橋”。
対岸側から歩きだしてはじめて水面間近にきたところの橋です。
幸魂大橋
こちら岸からは橋を直接望むことができます。逆光になってしまいましたけど。
幸魂大橋直下から管理橋方向を
同じく〈鉄塔の〉中の島
彩湖の公園(さいたま市荒川彩湖公園、戸田市彩湖道満グリーンパーク)範囲は幸魂大橋までです。これより下流は自然保護区域になっており、湖周辺への出入りはできません。
荒川堤防へ上がり、そこの歩道を歩きます。
荒川左岸30k標識から下流方向
標識右に周回はじめに通った排水門が見えてきました。
それにしても日影がなくて暑いでござる。
もう少しで一周
左端から排水門方向へのびる囲繞堤、足元の左岸堤防(周囲堤)の分岐点は左方向にあとわずかです。
ここから一周スタートした堤防の分岐地点
なにも目印がなくて絵的にアレですが、無事分岐点に戻り、彩湖一周完了しました。
このあと続きがありますが、長くなったので分けます。
彩湖一周はここまで。
彩湖(さいこ)と荒川第一調節池について解説を最後に置きます。
荒川第一調節池(あらかわだいいちちょうせつち)は荒川洪水時の被害に備えた調節池です。埼玉県さいたま市桜区から戸田市にかけ、8.1㎞の長さを持ちます。
彩湖は荒川第一調節池の一部を占め、常時貯水されている部分にあたり、正式名称は荒川貯水池。荒川第一調節池内の貯水池として1997年に完成しました。
荒川第一調節池は、洪水時は一時的に水を貯めて、下流の流量を低減する洪水調節池であると同時に、彩湖(荒川貯水池)は、都市用水となる水を貯めて渇水時に補給する利水施設でもあります。
荒川第一調節池全体の総貯留量は3900万トン、彩湖は最大1060万トン貯水できます。
彩湖への取水は湖よりやや上流の秋ヶ瀬取水堰で行われ、水位調整は下流側の水位調節堰で行われます。
洪水時などは秋ヶ瀬取水堰よりも上流側にある越流提から荒川第一調節池上流部に水が流入し、さらに大規模洪水では彩湖のある下流部ブロックへも流入堤を越えて水が流れ込むようになっています。
2019年台風19号通過時には3500万トンの水を調節池全体に貯留し、過去最大の記録となりました。