散歩の途中

散歩の途中で観察記録、その後少し調べて書くノート

葛西用水の逆川部分、瓦曽根溜井から古利根堰を歩く

前回ノートまで記録していた大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)つながりでもありますが、今回は葛西用水逆川(さかさがわ)部分を歩記録〈あるきろく〉しました。

 

葛西用水は1660(万治3)年に開通した灌漑用水路。埼玉県羽生市利根川堤防に樋管を通して取水口(元圦(もといり))とし、水路を開削しました。この時は幸手領(現、埼玉県幸手市久喜市杉戸町春日部市の一部など)内の用水路として開かれています。
後に大落古利根川や元荒川の流路を利用したり、新たな水路を開削するなどして灌漑範囲を拡張してゆき、宝暦年間(1760年頃)には現在の東京東部(足立区、葛飾区、江戸川区墨田区など)まで広がることになります。

葛西用水路の一部である逆川は、大落古利根川途中の松伏溜井(まつぶしためい)にある古利根堰(昔の呼び名は松林堰枠(まつばやしせきわく))において人為的に分けられた流れで、元荒川に出合う地点に存在する瓦曽根溜井(かわらぞねためい)までの部分を指します。

溜井というのは、用水をためておく溜め池、遊水池のことです。川の途中に設けられていると胃袋を想像します。〈個人の見解です〉

逆川(昔の呼び名は鷺後(さぎしろ)用水路)は寛永年間(1630年)頃に開かれた水路にあたり、1600年頃に造られていた瓦曽根溜井の用水量不足を補うため、古利根川から水をひいたものです。

 

葛西用水路、個人的には2019年に、水路開通時の末端となる墨田区向島曳舟川から遡って越谷市の瓦曽根溜井まで歩きました。

曳舟川跡・葛西用水を歩く (1)業平橋から花畑川交差まで - 散歩の途中

曳舟川跡・葛西用水を歩く (2)花畑川交差から越谷・瓦曽根溜井まで - 散歩の途中

今回は葛西用水単独のノートとしては3ページ目となります。

 

これまで水路を瓦曽根溜井まで遡りましたので、そこからスタート、さらに遡って古利根堰へ向かいます。

越谷市相模町、瓦曽根溜井の末端
瓦曽根堰

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この堰は瓦曽根溜井から余水を元荒川に流すために設けられたものです。溜井の末端。

 

堰建物後ろ側から

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正面はしらこばと橋(『しらこばと』は越谷市の鳥)、その下に現在の溜井。

 

水際に少し近づき

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左が逆川から続く現在の瓦曽根溜井、中央に流れを仕切る背割堤、右は元荒川です。

 

橋の先へ出て振り返り

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左端が橋の一部。
溜井は冬の期間、ほとんど水がありません。
溜井からいくつかの用水路が分かれており、対岸には2つの水門(水圦(みずいり)と呼んでいる)が写っています。右側手前がこの先へ続く葛西用水路の水圦、左向こうは八条用水水圦です。
過去には他にもいくつか用水路がここから分かれていました。

 

平和橋上から瓦曽根溜井下流方向

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左端に元荒川、その右背割提が延びています。かつては背割提がなく2つの流れは一体となり、右端の建物(越谷市中央市民会館)の周辺も瓦曽根溜井として水を湛えていたそうです。

 

平和橋の先、背割提の上から振り返って(下流方向)

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左が元荒川、右に見える建物は奥が越谷市中央市民会館、橋の手前側は越谷市役所や埼玉県越谷合同庁舎〈たぶん〉。その一帯瓦曽根溜井を一部埋め立てて建てたものです。

 

瓦曽根溜井の入口あたり

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左、逆川が左からカーブし、元荒川に寄り添ってきます。
中央の背割提はちょっと先まで、というかちょっと先から始まります。

 

ここは左、逆川上流方向へ進みます。

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逆川という名称、この川は(大落)古利根川から分岐して元荒川へ流れ込むよう設計され、人工的に開削された水路です。ところが分岐点古利根川からの水量が減少、元荒川の水量がある程度多いと流れの方向が逆転したことから『逆川』と呼ばれるようになったそうです。周囲が平坦で高低差がほとんどないこの地域ではほかにも同様な河川がいくつか存在するようです。

 

流れは500mほどで橋を2つ3つくぐります。
御殿橋の下流側から

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この先で逆川は元荒川の下を伏越でくぐります。

伏越(ふせこし)は一言でいえば水の流れの立体交差。元荒川の下に管を埋設してそこへ逆川の水を落とします。水は管を通って元荒川を横断し、下流側でサイフォンの原理により再び元の高さまで湧き上がります。

 

伏越の水吐き口付近

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四角く空いた穴の中、下から水が湧き上がってきます〈が、見えません〉

その向こうを元荒川の流れが横切っています。穴の上に「葛西用水元荒川伏越」と銘版がありました。
1967年まではここに伏越はなく、逆川は直接元荒川に合流していました。

 

伏越吐き口の真上に石碑が2つ

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用水、伏越と直接の関係ありませんが
左「越ケ谷御殿跡」、この周辺一帯(現在も町名は御殿町)には徳川家康によって設けられた御殿があり、鷹狩などに使用されていたそうです。
右はその解説が埋め込まれています。ここにあった御殿は明暦の江戸大火の際、解体されて江戸に運ばれ江戸城再建に使用されたなんてことも書かれてました。

 

元荒川の対岸へ、近くの橋を渡って回り込みます。

対岸から元荒川ごしに伏越吐き口付近

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この付近、地下を逆川の水が伏せ越しています。
河川敷は遊歩道整備工事中、トラックの停めてある上あたりに石碑、吐き口があります。

 

その背後は伏越の吞み口です。

写っているのは除塵機

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川のゴミがたまりやすい場所です。伏越に巻き込まれて詰まらないように除塵機がありますが、吞み口周辺はゴミだらけでとてもお見せできません。

 

伏越吞み口の近くで古い堰跡

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伏越がなかった頃、元荒川の逆流を防ぐための堰(逆川逆止堰、大正13年竣工)があった跡との情報がありました。

 

これより先の逆川は住宅地内を流れる整備された都市河川、という雰囲気です。流れに沿って歩道(逆川緑道など)が整備されています。

伏越から300mほど上流(越谷市大沢4丁目)

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この先約2000mは特に変化なく

新内橋上

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鷺高橋上

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定使野(じょうつかいの)公園から200mほど下流

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定使野公園内の流れ

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S字カーブの先に水門があります。その先に再び川を横切るための伏越があります。見えている水門は吐き口側。

 

近づいて、2つの水門

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奥は吞み口側、間を新方川(にいがたがわ)が横切っています。

ここの伏越、元々は大吉(おおよし)伏越の名称で、新方川が逆川の下を伏せ越していました。新方川の河川拡張工事で川の規模が大きくなりすぎたために現在の形に改められたということです。〈どのように工事したのか興味〉

 

新方川・定使野橋上から下流側制水ゲートと

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同じ橋上から上流側ゲート、逆川その上流側

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こちらも伏越手前に大きな除塵機が据えられてます。除塵機付近の様子はここも割愛。〈元荒川伏越よりはまし…〉
奥にネットがかかっている所は「キャンベルタウン野鳥の森」。

 

新方川伏せ越しの手前から上流方向

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その左方は
大吉調節池が広がってます。

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こちらは新方川の洪水調節用に設けられたものです。逆川とは一応無関係。

 

大落古利根川との分流地点、古利根堰までの2~300mは釣り堀状態

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大落古利根川を歩いたときもこの辺で似たようなコメント投げてますけど…
釣り人はみな守備万端、携帯用椅子に腰かけ、背後にブルーシートを掛け、水面近くへ下りる脚立を常備してます。〈何が釣れるんでしょう?〉

 

古利根堰に近づき

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一番奥に見えるのが古利根堰のゲート部分、手前は県道の新方橋。

 

新方橋上から逆川水の吐き口(伏越ではありません)

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右に写る古利根堰ゲート下は大落古利根川が流れています。

 

大落古利根川対岸へまわって
古利根堰、逆川への取水口付近を望む

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対岸、古利根堰ゲート右側から逆川へ流す水がとり込まれます。

この上流側は松伏溜井、古利根川の河道を使った溜め池が広がり(冬場で今回水はほとんど無し)、逆川以外にもいくつかの用水路が分岐しているようです。

ここから上流、葛西用水の水は大落古利根川起点から一緒になって流れていることはすでに記しました。

大落古利根川を歩く 杉戸・清地橋から河川起点まで - 散歩の途中

中川から大落古利根川へ歩く 吉川(武蔵野線中川橋梁)から古利根堰 - 散歩の途中

大落古利根川起点より上流の葛西用水は次回あたりまとめようかなと思ってます。

 

地図:今回分は《葛西用水(3)》