二ヶ領用水を、見ごろになった桜の花の下、歩いてきた。用水のほとりを歩きつつ、今回は花を見に行くのが目的と言っていいでしょう。思っていたよりも多くの場所で花を見ることができて、たくさん写真を撮ったので、すこしだけおすそ分け。花に比べると地味だけれど、用水も一応観察してきたのでそちらも。
二ヶ領用水行程
二ヶ領用水といっても、地元の人にしか知られていないのではないかと思うので説明。Wikipediaだけど。
概要
二ヶ領用水(にかりょうようすい)は、多摩川などを水源とし、神奈川県川崎市多摩区(上河原堰・宿河原堰)から川崎市幸区までを流れる、全長約32km(宿河原の支流を含む)の神奈川県下で最も古い人工用水路である。1597(慶長2)年に測量が始まり、14年の歳月をかけて1611(慶長16)年完成。二ヶ領用水の名は、江戸時代の川崎領と稲毛領にまたがって流れていたことに由来する。農業用水として多摩川から水を引いて造られ、かつては近隣の農業を支えた二ヶ領用水だが、時が流れて現在の沿川は宅地化が進んでおり、工業用水などに用いられるとともに、近隣住民の憩いの場としても親しまれている。地理・分水
神奈川県川崎市多摩区布田にある上河原堰で多摩川から取水し、すぐに旧三沢川および大丸用水の一部が合流して流下、さらに登戸で山下川を、東生田で五反田川を合わせ、川崎市高津区久地で新平瀬川に合流する。このうち旧三沢川合流から新平瀬川に合流するまでの区間は「二ヶ領本川(新川)」とも呼ばれ、河川法による多摩川水系平瀬川支流の一級河川として管理されている(河川延長5.9km、流域面積4.6km2の区間)。
また、川崎市多摩区宿河原にある宿河原堰でも取水し、宿河原町内を流れて久地に至る流路も設けられており、こちらは宿河原用水(しゅくがわらようすい)とも呼ばれている。この区間および上河原堰 - 旧三沢川合流の間は、河川法による準用河川として管理されている。
上河原堰の分水の一つである五ヶ村堀は、五反田川との合流点からすぐ上流で分流し、一部が五ヶ村堀緑地になっているほか、宿河原用水と立体交差して川崎緑化センター内を通り、多摩川の水門に続いている。
高津区久地で合流した 2つの流れは、久地円筒分水に流入するとともに、一部が新平瀬川経由で多摩川に戻される。
久地から先は、各々西から根方堀、川崎堀、六ヶ村堀、久地・二子堀と呼ばれる4方向に分岐するため、久地円筒分水により各堀の灌漑面積に応じた一定の比率(7.415 : 38.471 : 2.702 : 1.675)で正確に分水される。(Wikipediaより)
このノートでの歩き方は、まず宿河原堰から宿河原用水を久地まで歩く。その後上河原堰へワープして二ヶ領本川を下り、久地の合流点へ。そして久地からそのまま二ヶ領本川を久地円筒分水まで下って、さらに川崎堀に沿って歩いて行く。
◆1.宿河原堰から宿河原用水を久地へ
まず宿河原堰のある多摩川の堤防へ。
多摩川堤防から
宿河原堰
例によって解説はこちら
宿河原堰取水口から二ヶ領用水への引き込み口土手から
多摩川の堤防をぬけた、宿河原用水の一番はじまり
新船島橋から
南武線線路
線路の下を歩道でくぐれるが、高さは1.5mくらいしかなく、頭をかがめて通る。そのときに電車が通過しようものなら…
宿河原駅近く
仲乃橋付近
川崎市緑化センター近くにある掛樋
掛樋は手前の石橋、用水の立体交差。横切っているのは、現在の向ヶ丘遊園駅の南、五反田川合流点付近で二ヶ領用水本川から分水された五ヶ村堀の水。
稲荷橋のうえから
ちょっと変わった形の神社(?)と
この先は東名高速の高架下をくぐり、久地駅の近くで二ヶ領用水本川と合流する。
宿河原用水と二ヶ領用水本川合流点近く
橋の先で右方向から流れてくる二ヶ領用水本川と合流している。(わかりにくいな)
◆2.上河原堰から二ヶ領本川を下る
二ヶ領用水の水は多摩川の2ヶ所で取水されてそれぞれ独立した用水の流れとなり、久地で合流する。ここでいったん二ヶ領本川へまわる。(こちらは歩いた日が異なり、桜の木も少なかった。地味な風景になってしまってちと残念。)
二ヶ領本川は川崎市多摩区布田の多摩川上河原堰で取水されているので、そこへ。アプローチは稲田堤駅からとした。
上河原堰
堰の上部にある用水の取入口
多摩川堤防を越えたところ
その先で三沢川と交差するところがある。
三沢川と交差している場所
下は三沢川、大きな管が橋の脇を通っているので、ここに用水が通っているのかと思ったが、違うようだ。二ヶ領用水の水は三沢川の下を、サイフォンの原理を使った伏越で横断している。水が勢いよく流れ出ているのは用水側の余り水か。
二ヶ領用水が三沢川を横断する直前の地点
先にみえる堰のようなところで水が導管に落とし込まれて三沢川の下をくぐり、向こう側で、水を落とした圧力で逆に噴きあがってくる。
川をくぐって水が出てきたところ
下流方向
二ヶ領本川は三沢川との交差地点から下流側、津久井道(世田谷通りの神奈川県に入ってからの通称、神奈川県道3号世田谷町田線)の新川橋手前まで河川敷に歩道が整備されている。ここを歩いたのは宿河原用水よりも前で、まだ桜は準備中、天気もどよーんと曇りで地味になってしまったのが残念。
JR南武線との交差地点
手前の水の中にたくさんあたまを出しているのは「草堰」というもの。草堰は流れに杭を打って、石、土、草などで堰を築く工法という説明があった。
台和橋
橋の向こう側で山下川が流れ込んでいる。二ヶ領用水は多摩川の水を引くため人工的に開削された用水路だが、いま歩いている二ヶ領本川は、いくつか自然の川と合流させている。山下川もそのひとつ。
その先で津久井道(世田谷町田線)の道路、小田急線の線路を越える。津久井道を越えると二ヶ領本川は三面がコンクリートのごく普通の都市河川になってしまう。
五反田川との合流点
現在はコンクリートだらけになってしまっているが、ここでも自然の川の水が流れ込んでいる。すぐ近くに五ヶ村堀の分水口があるはずだが、確認していない。
この先久地で宿河原用水と合流するところまでは、川としても花としても見どころははっきり言ってない。
向ヶ丘遊園の大階段跡
小田急線の駅の名前にも残っているように、ここにはかつて、2002年まで遊園地があった。そこの入口だったところが変わり果てた姿になって残っていた。
跡地の一角には藤子・F・不二雄ミュージアム
ミュージアムから川を挟んだこちら側にもドラえもんのモニュメント。向ヶ丘遊園の街なかから、あちこちに藤子不二雄氏によって創り出されたアニメキャラクターの像などが置かれていた。ミュージアムは行列ができて盛況の模様。
その先は、川(二ヶ領用水本川)脇を並行する県道の歩道をずっと歩いて宿河原用水との合流点に至る。
二ヶ領本川と宿河原用水の合流点
右側から流れ込むのが宿河原用水。
◆3.久地円筒分水へ
2つの用水の合流点はJR南武線久地駅近く。そこから久地円筒分水へ二ヶ領本川を下る。
二ヶ領用水と平瀬川の合流
左から平瀬川、右は二ヶ領用水の余水。二ヶ領用水は合流の手前で必要な水量だけを円筒分水に導水し、余剰水は平瀬川に放流される。
平瀬川のトンネル出口
平瀬川はかつて溝の口市街地などを流れていたが、水害対策でトンネルが掘られて流路がこちらに変更されている。左側が最初(1941年)に掘られ、右側は1970年の改修で追加されたものとのこと。
二ヶ領用水の水は平瀬川の地下を伏越しで通り、円筒分水へ湧きあげられる。
久地円筒分水
用水はサイフォンの原理でここへあふれ出し、4つの堀に分水されている。
解説は例によってこちら
分水の様子
比率は根方堀7.415 : 川崎堀38.471 : 六ヶ村堀2.702 : 久地・二子堀1.675。ということなので、手前下側が根方堀、その向こうのちょっとだけ分けられているのが久地・二子堀、その右側が六ヶ村堀、残り(ほとんどなんだけど)が川崎堀となる。
こちらはすべて川崎堀へ落ちていく水
円筒分水ができる前にあった久地分量樋の解説
◆4.川崎堀を下る
川崎堀以外の水路は現在すべて暗渠となっているようで、唯一流れの追える、川崎堀をこの先下っていく。
川崎堀の流れはじめ
流れの規模はだいぶ小さくなっている。二ヶ領本川を流れる水はほとんど平瀬川経由で多摩川に戻されてしまうようだ。
川崎堀はすぐに桜の並木の間を流れるようになる。
いきなりアップでソメイヨシノ
国道246号をまたぐ歩道橋の途中から振り返って
歩道橋の先で
花の種類が変わった。このあたりから溝の口の市街地だが、こちらはソメイヨシノでなく彼岸桜(?)や枝垂れ桜がおもに植えられている。それはそれでとてもきれい。
大石橋のたもと
横切っている道は旧大山街道(矢倉沢往還)、この付近は街道の溝口宿。
東急田園都市線を越えたところで振り返って
二子新生橋の先で
ここで少し寄り道して二子坂戸緑道へまわる。
二子坂戸緑道
ここは平瀬川(久地円筒分水のところでトンネルから出てきていた川)の旧流路だったところ。曲がりくねった流れが埋め立てられ、その一部が緑道になっている。かつては平瀬川の水もこの付近で川崎堀の流れに合流していたとのこと。
合流した川崎堀に戻る
しばらく行くと桜並木は途切れる
向こうは第三京浜の高架。
その先の小公園で
また桜に迎えられる。花がなければなんということのない場所なのだが。
このへん、桜のほかに濃紅や純白、ピンクのぼかしが入った花桃などの木も植えられていてアクセントになっている。
ここは立派な紅色
中原区小杉御殿町付近
中原街道を越えて武蔵小杉の街に近づくと、またソメイヨシノの並木に。この付近はなかなか見ごたえがあった。
先ほどの写真近く
渋川分流点で
川崎堀の水が分流され、向こう側に渋川として流れていくところ。
桜なければただの自転車置き場
渋川を分けて、水が細くなった川崎堀
どアップ
カメラを向けたら不意に花から寄ってきた。(風が若干強かっただけです)
東急東横線と武蔵小杉のタワーマンション
東海道新幹線高架近くで
その先で貨物線などの下を堀はくぐりぬける。
横須賀線線路脇で水路が顔を出すとその脇にも桜
その先も並木
このあたりまで桜の並木があるとは知らなかった。
幸区鹿島田3丁目付近
さすがに桜並木もこのあたりまで。この先は下の堀が暗渠となってしまい、水の流れも見えなくなってしまう。
堀と桜はこれが最後
後ろは府中街道(国道409号)、堀に沿った道もこの先なくなる。
その先は名前はわからないが堀のうえが歩道になっている
鹿島田商店街近くの路地で
これは堀のひとつなのだろうか?
鹿島田商店街の先で
人工的に造られたせせらぎ。少し先で消えてしまう。その先はまったく流れの跡は掴めそうもない。
目的はなくなったが、川崎駅まで歩いてしまった。
ここまで。
もう少し手短にまとめるつもりだったのに…つい長くなってしまった。