散歩の途中

散歩の途中で観察記録、その後少し調べて書くノート

田無用水を歩く 玉川上水から分けられた水路のひとつ

玉川上水の分水路のひとつである田無用水の水路をたどって歩きました。
暗渠(あるいは廃止?)区間も多く、田無市街地などではすでに無用になった一方、途中の畑の中に残る素掘りのままの水路は印象的でした。

 

江戸時代初期の田無村(現西東京市田無地区)周辺はその名前が示すとおり田んぼも畑も造れない、水に乏しい地域でした。
1654(承応3)年に玉川上水が開かれましたが当初直接の恩恵は受けられませんでした。40年以上が経って1696(元禄9)年に玉川上水から分水の許可が下り、開削されたのが田無用水です。
現在の小平市喜平橋付近で水を分け、田無村まで約6㎞の水路を開きました。
周辺では田無用水のほかにも小川用水、鈴木用水などいくつかの用水路が開かれました。
明治にはいると玉川上水本流を現在水道局小平監視所のある立川市幸町・小平市中島町境界(野火止用水の分水点でもある)で分水し、玉川上水本流の北側を並流する新堀用水が開かれます。水路が複線化されたわけですね。
以降田無用水や上記の用水路は新堀用水から分流される形に改められ、現在に至ってます。

最初は現在の新堀用水(小平市喜平町1丁目)

ここは明治初期に開かれた新しい堀、新堀用水。途中小川用水、鈴木用水などを分水した後の流れです。
(この後分水されることなく)少し下流で田無用水に名前が変わります。

上の説明と被りますが新堀用水の案内が出ていたので

新堀用水
明治3年(1870)4月、この付近の玉川上水の北側の八か所に設けられていた分水口を一つに統合するため、現在の小平監視所近くから玉川上水に平行して掘られた用水です。それまで玉川上水から直接取水していた村々の各用水は、この新堀用水から水を引くことになりました。玉川上水が昭和61年(1986)の清流復活事業により小平監視所から下流は処理水が流れているのに対し、新堀用水は、多摩川の自然水が流れ、ここから枝分かれした市内の各用水を潤しています。小平の重要な歴史的文化遺産です。
こだいら観光まちづくり協会

 

流れを250mほど下って
田無用水のはじまり付近(小平市喜平町1丁目)

こちらは流れの位置等から推測すると江戸時代に開削された部分だと思います。下の写真には「新堀用水」の案内が出てますが。

 

さらに150mほど、回田道との交差付近
案内も「田無用水」に変わりました

田無用水
元禄9年(1696)に玉川上水から喜平橋付近で取り入れ、田無村の飲料水(生活用水)として使われました。小平市域では、現在の氷川通りや花南一丁目通りに沿って、田無の方へ向かっており、今はほとんどが暗渠です。ここは、その田無用水が今でも流れているのが見られる数少ない場所です。
こだいら観光まちづくり協会

 

竹やぶや木立の間に入りこみますが、すぐまた住宅の裏などに水路が引き廻され
区画整理の影響でしょうか、水路は何回か直角に折れてこんな場所へ

手前が用水路下流方向、フェンスの外へ出てきて道路を渡るので蓋がかけられてます。

 

渡った先は氷川通りという道に沿って流れます。

車道と歩道の間に用水路

ここは水路が見えます(開渠)が、ところどころ暗渠にもなります。

氷川通りを600mほど流れ、新小金井街道と交差します。
交差点手前にて

氷川通り、足元の歩道部分が暗渠区間の田無用水。新小金井街道交差点横断歩道下を通って向こう側で流れが現れます。

交差点信号機下から田無用水の先を望む

こちらには鉄板の柵(護岸?)もなく、より自然な流れの光景となってます。
左の案内内容は先ほどのものと同じなので省略。

この先畑の間を貫いて流れてますが水路は素掘のまま、古い時代の水路を彷彿とさせる風景となっています。


水路はほどなくまた住宅地内に入ります。こちらも畑を迂回して先へまわり込みます。

ところが気が付くと流れがありません。
鈴木町第6公園北側

見た感じ最近水は流れた気配がありません。先ほどまであった水がどこで消えたのかもわかりません。

ただ、水路はずっと続いてます。


ここは水が流れるべきところにも花が咲いてますけど


そしてこのあたり(小平市鈴木町2丁目)、田無用水と同様玉川上水(のち新堀用水)から水を分けた鈴木用水水路が近づいてきて交差します。

田無用水と鈴木用水の交差地点掛樋

橋(掛樋)を渡る鈴木用水とその下を横切る田無用水。

位置を変えてみると

掛樋には右から「昭和五年十月成」と刻まれているのが見えます。どちらの水路にも水がなく、もはや過去の遺物ではあります。〈そのわりに水路は鉄板とパイプできちんと補強しているのです〉

 

田無用水はこの近くで鈴木街道と交差します。
偶然と言っていいのですが、その痕跡を見つけました。

鈴木街道手前側、暗渠蓋の一部でしょうか、除去されずに残ってます。道路反対側歩道にも自動販売機の右側、コンクリートブロックのようなものが見えます。

後から調べましたが、田無用水水路はここから奥の植込みの中へのび、右の集合住宅建物手前で右に折れていたようです。

その先小金井街道を渡ると花南一丁目通りを進みます。ただしこれより先はずっと暗渠となっていて流れを見ることはできません。〈まあ、だいぶ手前から流れは消えてしまいましたが〉

 

花南一丁目通り(都道132号)に出て

痕跡は何も残っていないようです。強いて言えば歩道部分が暗渠の名残り?
勝手に空想しながら歩きます。

 

多摩湖自転車道との交差地点

右、木立ちの中を進むのは都内屈指の直線道路、最近名前変わってました「多摩湖自転車歩行者道」。〈「狭山・境緑道」とも言う〉
道路下には村山貯水池(多摩湖)と境浄水場を結ぶ導水管が通ってます。
車道のほうには踏切注意の標識、西武新宿線が横切ります。このあたりは花小金井駅近くです。(小平市花小金井南町)

 

小平市から西東京市に

かつての田無市域に入ります。水路の痕跡はありません。(西東京市芝久保町)

このあたりいまも畑があったり田無タワー(スカイタワー)がそびえていたり

田無タワーは高さ195mある電波塔、かなり遠くからも見えるのですが意外に目立ってないように思います。

 

小平市内で花南一丁目通りと呼ばれた道路を約2㎞、青梅街道との橋場交差点に出ます。
橋場交差点

ここは青梅街道旧道のほうです。
田無用水はここまで来ると2つに分けられ、青梅街道をはさんで街道に沿うように流されました。
田無の町は青梅街道沿いにのびていたので両側の家屋が等しく利用できます。

右の方にある自販機2台の手前、一方の水路が通っていた跡があります。
そこへ寄ってみます。

やすらぎのこみち起点

水路跡は現在遊歩道「やすらぎのこみち」となって青梅街道の両側に整備されています。
こちらは北側へ分岐した水路跡の歩道、その起点です。左に見えるカーブミラーのところで右に折れて先へ〈微妙にカーブしながら〉続いています。

 

同じ地点から南側へ分岐した水路跡の歩道入口を先に

正面の電柱うしろから歩道がのびてます。歩道はすぐ家の前で左折。

 

北側の水路跡に戻って

時々青梅街道からの枝道と交差したり

手前は庚申塔、向こうは馬頭観音〈だったかな?〉
あとは建物のいわば裏手を淡々と進んでいきます。

 

起点から1000mほど進んだところ水路の分岐がありました。
田柄用水分水口跡

1871(明治4)年、富士街道沿いに新たな用水路(田柄用水)が開削され、田無用水が分水されました。ここがその分水口になります。
タイル目の歩道が田無用水、コンクリ暗渠蓋のままが田柄用水です。

田柄用水はここから関、石神井、谷原、土支田など練馬方面へのびて最後は田柄川へつなげられていました。

 

分水口からほどなく田無用水は総持寺前へ
こんなところを通って


門前を通過します

真言宗智山派田無山総持寺。〈お参りしましたよ〉

 

道路1本はさんで隣りは田無神社。
境内から

参道にかかる橋、拝殿はこの右側。
個人的には若干疑問もありますが、神社が最近ここに池をつくった際に田無用水路の真上だった場所と記しています。

神社横から外へ出ると、お隣りの庭には本物の都電車両が置かれてました。〈ちょとびっくり 個人宅のため撮影は控えました〉

 

水路跡は総持寺より先に整備された歩道はなくなります。それでも痕跡の残る『暗渠道』は分かるので辿るのは難しくありません。

ここは絶対通ってたところ(西東京市田無町2丁目)

先へ入ったらまじで行止まりでしたが迂回して先へまわりこむと

西武新宿線のガードが現れました

ここを用水路が通っていたらしいです。

 

ガードをくぐりぬけると石神井川の調節池、その反対側へまわると

盛り土の線路の下、トラ柄模様の部分が田無用水の通っていたガード。その後用水の流れは調節池部分を通って手前石神井川(鉄骨の梁の下)に落とされていたようです。
北側水路はここまででおしまい。

 

南側水路跡は北側と大差ないので簡単に。

前方青梅街道橋場交差点〈信号が見えます〉

分岐した水路が直角に折れたところ。この背後に流れていきます。

 

こちらも『ふれあいのこみち』

歩道としてきれいに整備されています。

どうしようもなく街中へ出て来たりして専用の歩道にならない場所もありますが

 

田無駅の東側で線路をくぐるとすぐに石神井川に注ぎます。
ここが合流点と思われます(西東京市南町3丁目)

正面の細道、田無用水末流は向こうからこちらへ流れ、下が石神井川
護岸にいくつか穴があいてますが田無用水のもの〈上のひとつだけ?〉でしょう。機能しているのかも不明です。

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