散歩の途中

散歩の途中で観察記録、その後少し調べて書くノート

酒匂川を歩く その2 小山町から文命堤を経て松田町へ川を下る

酒匂川を歩く、日を改めて2日目のスタートは静岡県小山町から、川を下って歩くことにした。途中で前回、”酒匂川その1”の最後に取り上げた文命堤を経由して、最後は神奈川県松田町までのコース。

前回分へのリンク

 

酒匂川・歩いた足あと/同じ地図上に2日間の足あとをプロット(青:1日目、赤:2日目)

2日目のアプローチはJR御殿場線駿河小山駅から。
まず川の上流方向へ歩き、町役場近くを通って森村橋という古い橋まで行った。

途中、富士見橋から見る富士山(上流方向)

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下を流れる川が酒匂川だが、静岡県内では名称が変わって鮎沢川(あゆざわがわ)となる。しばらく鮎沢川で通す。

もう少しさかのぼると小山町役場の後ろへ。
町役場から川を渡ってたくさんの鯉のぼりが泳いでいた

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右が町役場建物の一部。後ろの橋は落合橋。

落合橋のひとつ上流側に森村橋が”残っている”。
森村橋

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登録有形文化財となっている橋で、現在渡ることはできない。
解説板から一部抜粋

森村橋(もりむらばし)
登録日:平成17年11月10日
構造:鋼製単トラス橋【寸法】橋長39m 幅員4.8m
特徴:森村橋は、開業当初に富士紡績㈱小山工場の門前を流れる鮎沢川に架設されていた木造橋が腐朽したことから、明治39年(1906年)11月2日の操業一〇周年祭に合わせ、鉄橋に架け替えられました。
富士紡績㈱小山工場に東海道線小山駅(現御殿場線駿河小山駅)から原料や製品をトロッコで輸送する為、橋の中央に軌道を敷設し、工場の基幹輸送手段として利用されておりました。
昭和43年(1968年)には、トロッコが廃止され、その後は軌道を取り除き、トラック輸送用に鉄板を敷設して使用されました。
森村橋は、富士紡績㈱創業期の不振克服に尽力した、森村市左衛門の功労を記念して、この名前が付けられました。邦人が設計・製作した鋼製トラス橋としては、わが国初期の近代化遺産となっております。
平成二十二年四月 小山町教育委員会

隣接した新森村橋から

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架橋から110年以上経っている鉄橋。

ここからUターンして川を下る。

左から支流の野沢川が合流している付近(下流方向)

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前方ははじめに渡った富士見橋。

駿河小山駅の方へ戻る途中で振り返って、見返り富士

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再び駅前を通過し、東の方向へ歩く。

町中をぬけると鮎沢川(酒匂川)の刻む谷に沿って行く。国道246号、JR御殿場線東名高速道路も川に沿ってつかず離れず、いつもどれかは視界に入ってくる。

小山町白岩付近から鮎沢川上流方向

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本日の富士山はここまで。この先は雲に隠れたというより周囲の山に遮られて見えなくなった。

下流側、国道246号小山橋

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小山橋先の国道に一度出て、再び旧道に入る。旧道とは現在の国道246号が整備される前からあった古い道。
この道が旧道でちょうど静岡県、神奈川県境あたり

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古い道であることを実は歩いている時は気づかず、あとで知ったしだい。この旧道は現在東名高速鮎沢PA付近までは車でも行けるが、その先は歩いて通れるかすら保証できない(実際に通ってないから何ともいえないけど)。昔はここを通るメインの道路だったはずだが。
正面向こうにみえる山は大野山といい、頂上付近一帯が牧場になっているらしい。

ところで先へ行ける保証のない道をなぜ歩いているかというと、ここを通ってみたかった。
透間(すきま)の吊り橋

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透間というのはこのあたりの地名(山北町透間)、この橋を渡ると鮎沢川をこえて国道へ出ることができる。

しかし、典型的な「揺れる」吊り橋でござる

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針金細いしワイヤーも錆びてるし、頼りになるものがない。

それでも踏み出してみた

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揺られつつの1枚。(しかも橋の上で180度ターンして撮ってるバカがここにいます)

無事に渡り、ふりかえると「通行制限二名を守り静かにお渡りください。山北町透間自治会」の文字があった。

楽しかったアトラクションの後は国道のトンネル歩きとなる。たぶんこのあたりが行程でいちばん険しい場所で、国道以外に通れるところがないのだ。

そのかわり景色は結構よい。
国道上から、U字に曲がる鮎沢川

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国道246号諸淵トンネル

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ダンプ、トレーラーなどの大型車両と大量に出会わないことを祈りつつ、突入。

出口を無事通過し、その近くから

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手前の橋は御殿場線、向こうは東名高速

いったん国道から離れて谷戸大橋上から上流側

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国道の手前に古い橋脚が残っていた。道路橋の跡と思ったが、鉄道の橋梁らしい。現在の御殿場線はずっと左側を通り、ここで川は渡っていないが、昔、東海道線として開通したころはここに橋があったようだ。

小さな茶畑、新しい芽がでていた

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しばらく歩くと丹沢湖など、西丹沢方面へ分岐する道路の交差点に出る。
清水橋交差点付近

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交差点の先で、西丹沢一帯の水を集めて流れてくる河内川と鮎沢川の合流点がある。合流点の下流側から酒匂川に名称が変わる。

河内川側へまわりこんで合流地点を望む

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手前は河内川、正面やや右の国道の低い橋の手前が合流地点。その先左へ向かって酒匂川として流れて行く。

ここからは交通量の多い国道246号から離れて歩く。

別の位置から合流点付近

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左奥から鮎沢川、右から河内川、正面白く見える水は近くの水力発電所(東京電力発電所)から放水されていたもの。

3本の橋

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赤東名、緑国道246号、灰色県道。右端少しだけ写っている建物は東京電力発電所。嵐で発電しているわけではなく、水力発電

この少し下流側にまた吊り橋がある。
谷峨(やが)の吊り橋、嵐橋

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先ほどの透間の吊り橋よりはしっかりしている。看板にある”渡橋条件”も通行条件10人以下、透間の5倍!
当然渡ってみる。揺れ方は10分の1以下だ。

橋の途中から上流側

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橋を往復して元の道へ戻る。河内川の合流から吊り橋あたりは多少平らなところもあったが、その先はまた地形が険しくなってくる。

下が国道246号新鞠子橋、上には東名高速上り線

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時々御殿場線線路も顔を出す

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川の上、昔東海道線であった当時は線路も複線だったため、橋脚の幅が広く、現在は片側が余っている。
しばらく待ったけど、電車はやって来なかった。

こちらも御殿場線の古いトンネル

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線路を撤去してしまった古いトンネルの入口。右奥側には現在も使用中のトンネル入口がある。

蛇行する川筋に沿って、カーブの連続する道路を歩いてきたが、JR山北駅近くまでくると向こう側が開けてくる。
向こう国道246号安戸橋

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いままで歩いてきた道も橋の向こう側で国道と交差。

その先に新旧安戸隧道

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トンネルの上にフェンスが横切っているが、水路が通っている。この水路には先の山北水力発電所でパイプから落とされる水が通っている。
トンネルをくぐった先に「川村関所跡」の解説板が立っていた。ここまで通ってきた道は東海道脇往還で、この周辺には箱根関所の出張所(とは書いてないが)があったそうだ。

樋口橋交差点で国道246号を横断する。神奈川県道726号という別の道路に入り、すぐのところに足柄橋が架かる。
足柄橋上で

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向こうには東名高速のアーチ橋、都合3本架かっている。

足柄橋たもとから、向こう側東京電力山北発電所とこちら側内山発電所の取水口

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安戸隧道の上を通っていた水路の水が落とされて発電を行っている。その水が酒匂川に放水されているが、勢いが残ってそのまま手前の取水口に吸い込まれていた。ここで取り込まれた水はまた水路を通って下流側にある内山発電所でまた電気をつくる。

足柄橋の取水口から取り込まれた水が水路を通ってここへ

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正面の除塵装置でごみを取り除き、発電所へ水を送る。手前は酒匂川へ戻される余水。向こう側には酒匂川が流れている。

そこから酒匂川を下っていくと段丘崖下に出る。
千貫岩から続く段丘崖(2枚)

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酒匂川その1の文命堤で、流れを弱めるために使われる「千貫岩」の崖地があったが、その崖の上流側の続きにあたる。この崖から見えるのも5万5千年前に噴火した箱根火山の火砕流堆積物だとされる。

そしてもう少し下ると文命堤、岩流瀬土手を通過して大口土手に出る。
新大口橋から大口土手

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ここはすでに前回、川をさかのぼって歩いてきたところ。

前回は右岸側をさかのぼってきたので、今回は左岸側を通って松田まで下った。新大口橋の下流側はどちら側の岸を歩いても特に支障はなかった。

松田町松田庶子付近から下流方向

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川原のグラウンド

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このあたりで酒匂川から離れ、松田の町なかへ。
新松田駅から小田急線で帰った。

源流までは訪ねていないけれど、酒匂川はとりあえずここでひと区切り。

なお、酒匂川の源流にあたる場所は自衛隊東富士演習場の内部にあり、近づくのは難しそうだ。