散歩の途中

散歩の途中で観察記録、その後少し調べて書くノート

石神井川を歩く その1 王子から三宝寺池まで

石神井川には興味をひかれることが2つあった。ひとつは下流の流路変遷、ふたつめは川の源がどんどん下流側に下がってきていることである。それぞれ簡単に説明すると
◆下流の流路変遷
現在の石神井川は王子付近で飛鳥山の台地を越えて東側の東京低地と呼ばれる標高の低い場所に流れ出し、隅田川に合流している。しかし昔の石神井川は飛鳥山の台地を越えず、その手前で流路を南に変えていまの京浜東北線線路の数百メートル西側あたりを蛇行しながら流れ下り、上野不忍池を通過して東京湾に注いでいた。地形図をみると不忍池付近まで川がつくった谷(底地)になっており一目瞭然なのだが、とりあえず解説としてはWikipediaの石神井川の項目を見るのが手っ取り早い。

石神井川 - Wikipedia

◆源流
石神井川の河川として公式の上流端は小平市花小金井南町2丁目の小金井公園の入口付近、公園北橋の脇に「上流端」の標識がありGoogle streetviewでも確認できる。そこから西東京市、練馬区、板橋区、北区を経て北区堀船3丁目で隅田川に合流する一級河川である。「公式の上流端」と書いたが、これは行政の管理上の言葉にすぎない。上流端からが河川であって、河川としてどこどこの自治体が管理するのだ的な決め事のために置かれているようなもの。(「一級河川」という言葉だって似たりよったり。)実際には上流端よりも上流に”河川じゃない”流れがあることが普通。
では石神井川の源流はというと、小金井公園の西側に隣接する小金井カントリークラブ敷地内と記述されているものもあるが、ここは埋め立てられてもはや流れはない。縄文時代はさらに西側の鈴木小学校付近の湧水が源流と推測されているが、この湧水もいまは見られないとのこと。こちらも地形図を見るとたしかに鈴木小学校付近まで谷底低地と呼ばれる、河川の流れが掘った谷状の地形が確認できる。
現在は公式上流端でも雨が降ったときでないと水の流れが見られないそうで、コンスタントに水が流れるのは東伏見稲荷付近からだとか、早稲田大学東伏見キャンパス付近からだとか、上流端よりも数kmも下流ということになってしまっている。

 

これらのうち下流の流路については別途古い流れのほうも確認してみる必要がありそうだが、現在の川の源はどのあたりだろうという確認は散歩ついでにできるのではないか、というのが歩いてみた理由。
前置き長くなってしまったが、石神井川その1は王子から石神井公園三宝寺池までの記録ノート。

スタートは王子駅

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南口に降りたのは今回、現在の河口(合流地点)まで行くのを端折ったのだが、下流部の流れの様子がこの出口の近くで垣間見えるから。
王子桜橋から下流方向

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ここから下流は長く河川改修工事が行われていたが、ここから見える限りでは工事は終わっているようだ。川の様子は都市河川の下流の典型的なもので、黒っぽい水が淀んでいる。高速道路が川の上に覆いかぶさって下の川がより黒くみえる。岸壁沿いに歩いても楽しくなさそうなので隅田川までを追わなかった。
振り返って暗渠から流れ出てくる石神井川の水

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川は駅の西側にある飛鳥山の地下を流れてここに出てくる。
スカム(川の表面にできるスポンジ状や膜状の浮きかす)のようなものも浮いていてきれいではない。このすぐ上流、暗渠になる手前の水はこんなに汚くなかったのに。
右側に見えるのは音無親水公園から流れ出てくる水の河床、にしてはずいぶん大きいのだが。川の本流が暗渠化される以前、親水公園ができる前はこちらを川が流れていた。それが残されている。
その上流側

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橋の向こう側が王子駅北口になる。
JRの線路を越えて王子駅親水公園口を出たところ

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改修されているがここは昔の流路であろう。かつてはここを川が流れていたが、いま本流は飛鳥山手前でトンネルとなり駅東側へ顔を出す。そしてずっと昔はここにあった台地の壁のため川は不忍池のほうへ流れていた。ここの台地の壁を崩したのは川自身なのか人の手なのか、そんなことは現在この場所を見回してみても何の手がかりも見つけられなかった。
音無親水公園

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両側が台地、その間がぽっかり空いたその谷底ということで少々暗い。
公園内にあった滝

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江戸時代には板橋区加賀付近からこのあたりにかけては川が削った渓谷になっていていくつか滝があったという記録があるそうだ。それを模したものか。ただこの滝は落差1m程度。
音無橋のアーチ

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上は都道が通っている。
駅側から来ると音無橋あたりが公園の終端、ここから石神井川の流れが寄ってくるのだがはじめのうちは堤防が高く、川の流れが見られるのはもう少し先になる。公園内に川から水をひく取水口もあったがどの程度使われているのかは不明。
音無親水公園を出てすぐのところ

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左側のつたがからまっているのが川の堤防。右側の壁は有刺鉄線監視カメラつき。
音無さくら緑地付近の橋から

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これが最初に見せた川の表情(飛鳥山暗渠より手前で)。ほかの川に比べて岸壁が高い、あるいは川底までが深い、という印象。岸壁の排水口から水が結構しみ出していて水量も多めだ。ちなみに岸壁の穴から出てくる水は下水ではない。
音無もみじ緑地を望む

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向こう左側の壁のあたり、昔は滝があったそうだ。
さくら緑地、もみじ緑地などは川の蛇行を河川改修によって直線化したときに残った旧水路を公園にしたもの。昔の地図をみると川が細かく蛇行を繰り返し、川幅もいまよりせまいことがわかる。大雨があればたやすく氾濫したわけだ。
音無もみじ緑地反対側から

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右側屋根の見えているのは金剛寺というお寺。そしてこちら側この足元付近に滝があったということだが、川の岸壁の高さ、まわりに山や丘はない地形であることなどから推測するとせいぜい10mから15m程度の高さの滝だったのだろう。それでも江戸の低地などまわりが平らなところに住んでいた人には珍しい風景である。観光の場所になったというのは分かる気がした。
この先滝野川では谷津大観音という、台座の下から頭のてっぺんまでだと2階建ての屋根と同じくらいの大きさの観音様を見た。最近できたもののようだ。さらに進むと音無くぬぎ緑地を過ぎ埼京線のガードにぶつかる。
埼京線付近から

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音無さくら、もみじ、くぬぎという緑地の命名は北区のもの、この先は板橋区となるので命名のセンスも変わってくるはず。まず板橋区最初は「板橋東いこいの森」がこの写真の右手一帯。
板橋区加賀2丁目付近 上流に向かって

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このあたり細かく川が蛇行している。かつての流れそのままなのか、改修してまだ蛇行が残っているのかは不明(昔の地図と比較してみればいいのだが)。相変わらず川底が低いというか壁が高い。壁の高さは10m近くあるようだ。
帝京大学病院などを過ぎてしばらく行くと「板橋」に着く。その手前(下流側)に旧流路を緑道として残した場所がある。
旧流路のせせらぎをのぞいて

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旧中山道にかかる板橋のたもとから

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説明板拡大

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板橋という地名はこの橋から。でもいまの橋は昭和47年(1972)に架けられたもの。
板橋もう一枚

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説明する必要もないと思うが現在は木製の橋ではない。
そしてその次の橋が現在の中山道である国道17号線に架かる新板橋。
新板橋五重層

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下から石神井川、国道17号線、上り線ランプウェイ、高速本線下り(首都高速5号池袋線)、高速出口(料金所)だと思う。高速の上り本線は料金所の向こう側にあるが見えない。で、橋は新板橋。
中根橋と石神井川

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新板橋から7~800m上流側。板橋区内の石神井川沿いは桜並木になっているところが多いが、このあたり一帯もずっと並木道になっている。
東武東上線の線路を越えて

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中板橋駅近く。駅に近いせいかこのあたりの歩道は完全に生活道路である。川は音無や加賀のほうに比べて底まで少し浅くなったようだ。
この先、川越街道、環状7号を渡る。
板橋区小茂根3丁目付近 上流に向かって

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前方に見える橋の右側からかつては田柄川が流れ込んでいたが、現在は暗渠でその出口がある。
この先は都立城北中央公園にはいる。前方の木立ちが公園。
城北中央公園内の歩道

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写真奥側が公園のメインエリア。野球場、陸上競技場など運動施設がメインの公園みたい。このあたりで板橋区から練馬区にはいる。
環七通りを過ぎるあたりから町の雰囲気が変化してくるように思った。昔からの町、住宅地が、それほど古くない住宅地に変わってくる。城北中央公園を過ぎてしばらく行くと東京メトロ有楽町線氷川台駅の近くを通る。地下鉄の駅なので通り過ぎたことがはっきり認識できないのだが。
新大橋のうえから上流側(練馬区早宮1丁目と桜台6丁目の間)

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練馬区にかけても桜並木になっているところが多い。
先の写真の近くで

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やや分かりづらいが、護岸に開けられた小さな穴から盛んに水が流れ出ている。この川沿いを歩いていて、あちこちでこのように水が流れ出しているのを目撃した。この日だけなのか、定常的に流れ出しているのかわからないが、川全体ではこの護岸の穴から流れ出している水でかなりの流量になっているように思えた。ちなみにこの前日と前々日の2日間で10mm程度の降水は記録されていることを確認。
この先しばらく行くと川は「としまえん」の中へ入っていく。
豊島園から出てくる川の流れ

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さすがに遊園地の入園料を払って園内の流れを見に行くほどでもないので、園のまわりを迂回して反対側に出る。
反対側にまわって、豊島園へ入っていく流れ

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神路橋から 練馬区高松1丁目

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東京都の川で最近になっての河川改修での護岸はどこもこんなかんじ。護岸が黒っぽくなっているところは水がきたことがある証拠だが。
少し先へ進むと環状8号線と目白通りの交差点に出る。川もこの下をくぐって反対側へ出る。
練馬中央陸橋交差点付近

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河川改修工事も行われていた。この道路の下、まん中U字溝タイプの川底だ。
さらにすすむと再び住宅地のなかの桜並木で川岸両側歩道、が続く。並木がとぎれたあたりで西武池袋線の下をくぐる。
高富士橋から下流側

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西武線の陸橋の下あたりになる。練馬高野台駅の脇。
陸橋をくぐると西の方へカーブして笹目通りの下をくぐって
都営南田中団地付近

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このへんから川岸に下りられる遊歩道がつくられている。音無付近にあった親水施設以来だ。
川岸の遊歩道から

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この遊歩道の終点から南田中団地西の交差点を西に行けばもうすぐに石神井池に着く。この日はそのまましばらく川沿いの歩道を先へすすんでいこい橋まで。
いこい橋から上流側

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本日の石神井川の離脱点がここ。このあと石神井公園に向かう。
石神井公園は記念庭園の小さな池のあるところから中へ入り、石神井池へ向かった。
石神井池ボートのりばを望む

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石神井公園にある池は石神井川の源流ではないが、流れ込む水の供給源のひとつになっている。この付近が池のいちばん下側、この付近から池の水が石神井川にちょろちょろと流れ出しているはずであるが、その流れは未確認。ここから上側にある三宝寺池を目指して石神井池の南側を歩く。
石神井池 池南側から北側を望む

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水はやや緑色だが臭気はない、井の頭池や善福寺池と似たり寄ったりかな。魚は鯉がたくさんいる模様、つり禁止だけど釣り人多数、何を釣っているのか不明。
石神井公園には石神井池と三宝寺池の2つ池があるが、もとは三宝寺池しかなかった。石神井池のあったところは三宝寺池から流れ出す三宝寺川が通っていて周辺は田んぼだった。それを景観保護の目的で川をせき止めて1933年に石神井池ができた。ということである。三宝寺池は周辺の湧水により大昔から存在していたが、近年は都市化のため湧水量が極端に減少しており、地下水をポンプアップして池に供給している。武蔵野台地上の池はどこも湧水量不足でみんな同じ状態のようだ。
そして本日の「まで」点、三宝寺池

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とりあえず石神井川その1はここに到達することを目的としたのでここまででおしまい。その2では石神井公園から散歩再開とする。
この日は西武池袋線石神井公園駅へ。19.1km歩いた。

石神井川その2はこちら

miwa3k.hatenablog.jp