秦野駅から南へ渋沢丘陵に上がり震生湖。そこから中井町の丘陵と谷戸を上り下りして、小田原市境の尾根から大井町に入る。いこいの村足柄から上大井に下って足柄平野に出たあと、酒匂堰に沿って歩き、足柄紫水大橋で酒匂川を渡り、開成町まで。北に丹沢、東は横浜川崎、南に相模湾、西に富士箱根を眺望できる、丘陵のみかん畑、里山の森、思ってた以上に良い散歩道だった。
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東名高速の秦野中井、大井松田というICの名前くらいでしか出てこない、はっきり言って、神奈川県のなかでも目立たない中井町、大井町。そういえば行ったことはないなあ、ということで行ってみた。どこを歩けばいいのかもよくわからないので、秦野市、中井町、大井町の観光案内などを見つつ検討。いくつかの散歩道をつなげて、最初は上大井までの予定だったのだけれど、電車が来ない御殿場線を待つよりもと思い、開成まで歩いてみた。開成町はおまけ扱いになってしまってごめんなさい。
最初は小田急線秦野駅
秦野市の中心駅だが、街中と反対の南口側はいたって静か。
住宅地の中を歩いて5分ほどで今泉名水桜公園の湧水池
秦野は盆地になっていて、周囲の山の縁などにたくさん湧水があるとのこと。ここもそのひとつで、湧き水が池になっている。
渋沢丘陵の北の縁を西から東に流れる室川を渡ると
白笹稲荷神社の鳥居
[アングルが悪いね]
神社のHPでは、関東三大稲荷を自称している。秦野市観光協会HPによれば、関東三大稲荷は「一説によると茨城の笠間稲荷、王子の装束稲荷、秦野の白笹稲荷ではないかといわれています。」ということだ。
お稲荷さんの付近から丘陵に上がる坂道にかかってくる。
渋沢丘陵(大磯丘陵の北側部分にあたる)と秦野盆地の低地側の境には渋沢断層と呼ばれる断層が走っていて、この断層が活動したことで秦野盆地と渋沢丘陵(大磯丘陵)の段差が生まれたといわれている。
断層のつくった段差を登っていくと秦野の市街地と北側の丹沢の山々が一望できる。
坂道の途中から北東方向を望む
北西方向
丘陵のうえに出て
丘陵と市街地の高低差は7,80mある。丘のうえや斜面は畑地や林になっている。尾根伝いに少し進み、反対側の谷地というか窪地へ下りていくと
震生湖(しんせいこ)
震生湖に架かる古く小さな橋
その橋のうえから
湖というよりも池のような大きさだが。湖畔にあった案内板から抜粋
震生湖は1923年(大正12年)9月1日の関東大震災の時、渋沢丘陵の一部が崩落し、その土砂が谷川をせき止めてできた自然湖です。海抜150m、面積13,000平方メートル、平均水深4m、最大水深10m
ちょうど湧水のある源流部分で川がせき止められ、水が溜まったようだ。地形図をみると湖から下流部分には水が流れはじめているところがあるので、この川と湖の間は水流が地下でつながっていると考えられそう。湖では釣りをする人数名。
湖の窪地から反対側の丘の上に上がると中井町に入る。
震生湖から出てきたところ
標識にもある、中井町ハイキングコース「みかんの花咲く里山コース」にまずは沿ってあるく。みかんの花は咲いてなかったが、実ったみかんをたくさん見ることができた。
途中で東名高速の上を渡る。
西向きに、向こう箱根の山々がみえる。箱根が見えるということはきっと富士山も
富士山は雲がかかり気味
このあと富士山方向の雲がどんどん量を増して、この日は最後まで富士山の姿を、雲の邪魔なしに見ることはできなかった。
丘の上の茶畑やらなんやら
一般道をあるくのだけれど、ほとんど車も通らず、のんびりいいところ。
海も見えてくる。逆光がつらい。
丘陵のうえから次第に下りおりて、中井中央公園、中井中学校脇を通る。川の流れる谷戸の低いところまで下りてくる。
町の中央を流れる中村川の支流、岩倉川の橋のうえから
中村川沿いの遊歩道
遊歩道から(2)
県道を横切るところに道祖神
このあたりは中井町雑色(ぞうしき)。関東ローム層の一種に箱根火山由来の雑色ローム層という名前がついているものがあるが、その雑色がここ。(極めてマイナーな話です。)
ここからまた山にはいる。上り坂、雑色付近の標高が50m、丘のうえ、古怒田というところが210m、まずはそこまで上がる。この先は斜面が森に覆われて、そのなかを通る。道路は簡易舗装されている。人も車もほとんど通らない。
尾根まで上がったところで北東側丹沢方面を望む
隣が採石場で木がすべて刈られてしまっているが、その分遠くを望むことができる。
丘の上のみかん畑
みかんの収穫って、木ごとに実を丸刈りしていくのだろうか? たわわに実がなっている木とほとんど実がなくなっている木がある。(ほかの畑でもそうだった。)
古怒田の集落からまたさらに山道をのぼる。途中坂道の竹やぶ
古怒田集落から高さにして100m程度上り、標高317mの浅間山の頂上を通過する。
浅間山の手前で
浅間山の頂上が中井町、大井町、小田原市の境界地点。周辺に電波塔が数本。たぶんこの日通過した最高地点。ここから尾根筋を通って大井町へ入る。
尾根筋から北側丹沢方面
苦しいけど、東側。京浜方面まで、目視ではみえる。
西側、箱根外輪山と富士の稜線など
みかんの木を入れて、東側の風景
箱根の外輪山。右のピークが矢倉岳、左のピークが金時山、でいいんだよね
いこいの村足柄
山道、森のなかからようやく人里へ。
おおいゆめの里からも富士山頂は見えず(矢倉岳の右後ろに富士山がいるのだけど)
ここからひたすら坂を下り、上大井を目指す。
最初に渋沢断層のことにふれたが、こちら、大井町の丘陵と足柄平野の間、大磯丘陵の西縁にも、国府津松田断層という活断層がある。先ほど通った浅間山の標高が317m、足柄平野は2,30m程度として、断層により300m近い段差ができている。いま下りているところがその断層。
国府津ー松田断層帯 (地震調査研究推進本部、Wikipediaから抜粋)
神奈川県足柄上郡大井町付近から大磯丘陵の西縁に沿って延び、小田原市を経て相模湾内に至る断層帯です。海域部を含む長さは約35km以上と推定され、北北西-南南東方向に延びています。本断層帯は、断層の北東側が南西側に対して相対的に隆起する逆断層と考えられます。また、大深度反射法弾性波探査の結果から、本断層帯はフィリピン海プレートと陸側プレートの沈み込み境界から分岐した断層であると考えられるます。この断層は相模トラフ巨大地震の発生と同時に活動すると見られています。
最新活動時期は西暦1150年から1350年の間であると推定されており、相模トラフ巨大地震であった可能性がある1293年の鎌倉大地震の起震断層の一つである可能性がある。 過去約6000年間に約20mの上下変位をしているとされているほか、1995年から1996年にかけて実施されたトレンチ調査によれば、3000年間で4回或いは5回の変動イベントが確認されている。
最初はここから帰る予定だったのだが、駅の時刻表をみると、上りも下りも出発したばかりで、次の電車は1時間ほど待たなければならない。時間をつぶすところもないので、もう少し歩いて小田急線の駅を目指すことにした。
それにしてもこの駅、無人駅なのだが、きっぷ販売機もICカードの精算機も何もない。
上大井駅前の広場
住宅地を歩いていたら、渋い家が2軒
川かと思ったら酒匂堰という用水路
この用水沿いに歩道があり、そこを歩いていくと酒匂川近くに出てくる。
途中で先ほど通ってきた丘陵地帯を振り返って
見にくいが、山の上に鉄塔が何本かあって、その付近を歩いてきた。
この辺まで来て、富士山方向から流れてくる雲に覆われて日差しがなくなってしまった。周辺は晴れて青空なのに真上だけが曇っている奇妙な天気になった。
酒匂川、酒匂紫水大橋
橋の途中で大井町から開成町に入る。
橋のうえから酒匂川の様子その1
その2
橋を渡り終わってから住宅地に入り、ほどなく小田急線開成駅に着く。
この日の歩行距離は最初の予定に少しおまけがついて19.0km。